南アフリカでダイヤモンドが発見されたのは1867年、
日本では徳川慶喜が大政奉還を行い、坂本龍馬が暗殺された年で、
オレンジ川には一攫千金を夢見る山師たちが世界中から殺到しました。
このダイヤモンド・ラッシュに、ロンドン・ロスチャイルド家の
ナサニエル(1840-1915)は当初から注目し、
代理業者のアングロ・アフリカン・ダイヤモンド鉱山会社に投資し、
様子を見守っていました。
雨の後のタケノコのように出現した中小の会社は次第に整理されてゆき、
最も良質な原石を算出するキンバリー鉱山一帯は、バーニー・バルナトが
経営するバルナト・ダイヤモンド鉱山会社と、セシル・ローズが経営する
デ・ビアスの2大会社に集約されていきます。
オックスフォード出身のダイヤモンド長者セシル・ローズは、
1887年までにロスチャイルド家が出資している
アングロ・アフリカン・ダイヤモンドを吸収すると、
同年7月にロンドンのシティにあるロスチャイルド父子銀行の
ナサニエルを訪れ融資を仰ぎました。
ダイヤモンド市場は、バーニー・バルナトとセシル・ローズの激しい競争のために、
非常に不安定となっており、セシル・ローズはその対策についても
ナサニエルと話し合いました。
ナサニエルは、この時セシル・ローズに100万ポンドの融資を約束し、
無尽蔵の買収資金をちらつかせるデ・ビアスとロスチャイルドの前に、
バーニー・バルナトは屈し、バルナト・ダイヤモンド鉱山会社は、
セシル・ローズのデ・ビアスに吸収合併されることになります。
ここに、品質・量ともに世界最大の南アフリカのダイヤモンド鉱山は、
たった一つの会社、デ・ビアスに握られる事になりました。
正式名は、「De Beers Consolidated Mines(デビアス鉱山会社)」で、
設立されたのは1888年3月13日の事でした。
ナサニエル・ロスチャイルドは、デ・ビアスのダイヤモンドを
売るヨーロッパの販売網の整備にあたり、
水も漏らさぬダイヤモンド・シンジケートを築きました。
デ・ビアス、ロスチャイルドが確立した、
悪名高い 「 CSO = Central Selling Organisation (中央販売機構)」 と
呼ばれる世界中のダイヤを一手に集めて独占的に販売するシステムは、
CSOの本部、ロンドンで年に10回行なわれる
「サイト」よ呼ばれる販売には、デ・ビアスが認定した業者約170社しか参加できず、
買い手側の業者が事前に希望の原石の種類などを提出し、
そのあとでCSO側がダイヤ原石の入った袋を提示。
そのあと、その袋の内容に納得すれば買う、
できなければ買わないの2者選択しかなく、中身の調節は出来ませんし、
価格交渉も一切無しと言うものです。
デ・ビアス、ロスチャイルドはマーケティング・販売戦略で最も力を発揮し、
ダイヤモンドを金にも匹敵する宝飾品としての地位を確立させました。
彼らが特に力を入れたのが、結婚指輪マーケットで、
今日では当然の風習となっているダイヤモンドの結婚指輪は、
実はここ数十年の間にデビアスが広めたもので、
ハリウッド映画でダイヤモンドの婚礼指輪を使用させたり、
有名女優を使ったダイアの指輪CMを流す事で、
結婚指輪=ダイヤモンドという新たな文化を確立させていったのです。
1938年に、デ・ビアス社が、アメリカの広告代理店、N.W.Ayer&sonに、
「ダイヤモンドをロマンティックに広めて欲しい」と依頼したのが最初で、
それまで誕生石が一般的だった結婚指輪を、 ”A Diamond is Foever”
というキャッチフレーズで広告を行いました。
1950年代まで、結婚指輪の選択権は女性側にありましたが、
女性はお金の管理に厳しく、あまり高価な指輪が売れなかったので、
広告代理店のN.W.Ayer&sonとデビアス社が
「結婚指輪は2人で選んじゃダメ、男性からのサプライズでなければ」 と宣伝し、
そしてイギリス人男性にガイドラインを押し付けました。
「結婚指輪は給料1ヶ月分」
バカなアメリカ人男性にもガイドラインを押し付けました。
「結婚指輪は給料2ヶ月分」
更にバカな日本人男性にもガイドラインを押し付けました。
「結婚指輪は給料3ヶ月分」
日本でも80年代に「ダイヤモンドは永遠の輝き」というデビアスのCMが多数流れていましたが、当時の日本はバブル経済に沸き、アメリカに次ぐ世界第二位の富裕国家になったので、デビアス社がマーケティングに力を入れていたという背景があったからです。
何故、日本人男性は3ケ月分なのか?
広告代理店のN.W.Ayer&son自身が答えています。
” We were, quite frankly, trying to bid them up. ”
「我々は極めて率直に、ただ値をつりあげようとしただけだよ・・・」
彼らは我々に売りつけた後に、影で言っているのでしょう。
「 日本人はアホネ! 」