(解説)日本における軍事科学技術の動向

(解説)軍事科学技術の動向

近年の情報通信技術(IT)の大幅な進歩に伴い、米国をはじめとする先進諸国は、IT革命に端を発する技術革新が戦闘力などの飛躍的向上を実現し得ると考え、軍事技術分野における各種研究と施策を継続している。

特に、米国においては、軍の変革(トランスフォーメーション)の方向性として、ネットワーク中心の戦い(Network Centric Warfare)が重視されている。

このネットワーク中心の戦いでは、偵察衛星や無人機などを中心とする情報収集システムを駆使して収集された敵部隊などに関する情報は、ネットワークを通じて共有され、遠隔地の司令部からであっても極めて短時間に指揮・統制が行われ、目標に対して迅速・正確かつ柔軟に攻撃力を指向することが可能となる。

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これは、戦場空間における戦場認識能力のさらなる優位を獲得するとともに、より効率的な戦力運用を目指すものである。

また、ITの発達はメディアが戦闘様相や被害状況をリアルタイムで世界中に報道することを可能にし、一般市民や味方兵員の死傷をより局限することを求める社会的趨勢を生み出した。

こうした趨勢に対応するためにも、米国を代表とするハイテク型軍隊を擁する国々は、軍事目標に限定した精密で効果的な攻撃のための精密誘導技術や味方兵員の死傷を局限するための無人化技術に関連する研究開発を重視している。

精密誘導兵器の代表的なものとして、爆弾用精密誘導装置(JDAM)がある。その特徴は、非誘導(自由落下型)爆弾に誘導用テイルキット1を装着することにより、正確で全天候型の誘導爆弾を簡易かつ安価に製造できる点にある。

JDAMは、優先順位の高い目標に対する戦闘機や爆撃機による正確な空対地攻撃を可能にした。

誘導は、尾部の操舵翼、駆動装置、制御用の電子回路などから構成されるテイル・コントロール・システムとGPS(全地球測位システム)支援のINS(慣性航法装置)によって行われ、最も正確なモードによれば、投下した爆弾の半数以上が半径十数mの円の中に着弾するとされる。

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他方、PAVEWAYと呼ばれるレーザー誘導の精密誘導爆弾も広く使用されており、GPS誘導よりも命中精度が高いとされているが、着弾するまで目標にレーザーを当て続けなければならないという運用上の制約も存在する。
無人化技術については、その代表的なものに無人航空機(UAV)がある。米国防省が本年2月に発表した「4年毎の国防計画の見直し(QDR)」では、UAVの開発や配備が重視されている。
具体的には、本QDRにおいて、国防省は、統合無人戦闘航空システム(J-UCAS)2を再編することとし、これにより、空中給油が可能な空母搭載型の長距離無人航空機の開発を進め、スタンドオフ攻撃能力や海上航続能力などを向上するとしている。
また、現有のプレデター3やグローバルホーク4の取得を推進し、UAVによる偵察・監視能力などを現在の2倍にするとしている。

1)爆弾の尾部に装着する操舵翼、駆動装置、誘導装置や爆弾中央部に取り付けるストレーキ(翼)など、爆弾本体に装着する付属装置全体のこと。

2)J-UCASは、米空軍と米海軍が別個に進めていた無人攻撃機の実証計画を国防高等研究計画局(DARPA)の下で統合して推進してきたものであり、敵防空網制圧などを任務とし、ボーイング社のX-45(空軍)、ノースロップ・グラマン社のX-47(海軍)の2機種で実証が進められてきた。

3)MQ-9BプレデターBは、最大運用高度15.5km、最大航続距離12,000km、航続時間35時間、最大水平速度444km/h、ペイロード(内部)363kg、(外部)1,360kgとされ、攻撃能力を重視して開発されている。(数値は、ジェーン年鑑による。)

4)RQ-4Bグローバルホークは、最大上昇限度18.3km、最大航続距離23,000km、最大航続時間36時間、最長滞空巡航速度574km/h、ペイロード1361kgとされる。(数値は、ジェーン年鑑による。)

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