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総合商社は年収が高いが、なぜ若い人が辞めていくのか?
元商社マンで自分の(海外の)大学にマスターをやりに来ていた人と同じ学生寮で知り合いになって色々話を伺ったので若い人が辞める理由は想像できます。
二十年ぐらい前のことですが本質は変わっていないと思います。
まず、労働時間が長い。会社の社内食堂で昼食を口にかきこんでタバコを一服。腕時計をちらっと見ると昼12時過ぎ。
”あと(仕事終了まで)十二時間か”と心につぶやく。
終電が深夜0時半なのでその時間まで働く。
新卒の研修後にいきなり一日+15時間労働の環境に放り込まれたので、同じ研修上がりの人間と”マジこれ”と言葉を交わす。
ちなみに年末のお大晦日でも同じ。ただし夕方七時過ぎぐらいから酒とツマミが出回りだすとか。
しかもチンタラと働けない。駆け出しのペーペーの時は物忘れしてポカられたと言うので、それならメモでも取ればいいじゃないですかと聞いたら、メモを取る暇があるような呑気な仕事ではないとか。
つねに五つぐらい別のことが同時進行していて、今目の前でやっている仕事を5分ですましたら、その次の次の次には何をするかを考えていないといけない。
それが毎日十五時間続く。毎月とは言わないまでもちょくちょくある社内の人間の葬式で平均寿命が縮まっていることが実感できるとか。
具体的にどんな仕事をしていたんですかと聞いたら、農薬をアジアで売る仕事を自分はやっていたましたけど全部やりますよとか。
全部ってどういうことですかと聞き返したら、韓国の工場から農薬を発注して、船荷証券なんかの輸送の手続きも全部やって、
タイで売るときは、タイの大学教授に先に”お礼”を渡して、この農薬は安全ですという証明書を書いてもらったり、
インドネシアだと大統領の娘婿の所有する会社が独占販売する一枚2ドルもするシールを商品にはって(しかも入金先の銀行はなぜかスイス)、農村部の販売店に卸す。
その営業も自前。さらに監査と集金を兼ねてそれらの販売店を回るときは、ついでに軽トラック一台とカラオケ一台をレンタルして紙カートンのオレンジジュースを多量に買込ん、
歌とオレンジジュースで村々で商品を宣伝しながら地方を回るとか。
ちなみに途上国の農民は目の前で虫がコロッと死ぬ即効性の農薬を期待するので日本だと売ってはいけないような農薬をアトミックとか
ターミネーターみたいな名前をつけて赤とかの毒々しい色のパッケージで売らないといけない。
そういうマーケティングも自前。例外は国連関係の営業で、この場合は完全に人畜無害の商品を求められるので殆ど効果のない農薬になるとか。(でもマージンは高い)。
で、集金後にタイやパキスタンの銀行で入金したお金が日本の銀行口座に円でカシャーンと振り込まれて商売終了。為替変動のリスク管理なんかも自前でやる。
年収が高いのに若い人がやめる理由は
1)死にたくない。
2)使う暇がないので年収が高くても意味がない。(高級車や家のローンや子供の教育費で自分を縛らないと続かないとか。労働と報酬と消費の因果関係が逆な世界)
3)高い年収に見合う仕事ができない給料泥棒は追い出される。
4)元商社マンだと何でもやります、何でもできます、どこにも行きます、何時まででも働きますなのでもっと楽な仕事に再就職できる。
じつは自分の叔父も商社マンで無事に定年退職したのですが仕事の事は全然知りませんでした。この話を聞いて少し尊敬しました。